大根/松本 卓也
 
そういえば最近テレビを点けていない
別に何らかの偏った思考思想によるものじゃなく
リモコンのボタンを押すのさえ億劫に感じてて

惰性か限りなく進行する生活の中で
現実の重さからどうやって逃げ出すか
そんな事ばかり考えているわけでもない

考えてみれば自分と言う殻さえ破れないのに
誰かの心を動かす事など出来る筈もない訳で

思うが侭に生きれば良いとか
自分の正義を貫けさえすればとか
そうやって傷付けてきた心は
何も僕たちばかりじゃないのに

朝目覚めるたびに去来する
今日が昨日と違う日でありますように
願いが叶った事は一度でもあるのかな

雀の鳴き声が囁いて
徐々に暑さを帯びる風
中高生とすれ違う坂道
予定を脳に刻み付け
頭を下げる事に慣れきって

溜息をついても変わらない
煙草の銘柄を変えても同様で
軽トラックに積まれた木材
クラクションと落書きされたポスター

何処も同じでしかない
生ゴミを漁るカラス
灰色に濁った川を泳ぐ鯉
道端に転がる萎びれた大根

・・・大根?
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