シャーペンドット/シリ・カゲル
社会の底辺に位置するシャーペンドットは
旧国鉄の駅舎を解体することで生計を立てている
そもそも旧国鉄の駅舎というものは
発がん性のアスベストなんかが使われていたりして
いくら肺呼吸じゃないとはいえ
「ア」で始まるもの恐怖症のシャーペンドットにとっては
駅舎解体は最も苛酷な労働のひとつだと言えよう
それでもなんとか1ヶ月近くかけて
ひとつの駅舎をきれいさっぱり消滅させると
そこはアネモネの花が風にそよぐ
どこにでもある野っぱらになったりするわけだが
シャーペンドットはそれから休む暇もなく
持ち込んだ装備の中から大きなスコップを取り出すと
アネモネの花をひと株ずつ丁寧に掘り起こし
その代わりに持参したちまきの球根を植えていく
そして、植え替えの作業がすべて完了すると
シャーペンドットは満足そうにうなずいて
ちょうど迎えにやって来る急行列車に乗って
次の廃業駅へと旅立って行くのだった。
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