やまない音/霜天
 
あちこちに光を反射する海と
緩やかに登っていく山の斜面とに
張り付くような町を
通り過ぎる

ざあざあと
長い波間を
滑り込むようにして
通り過ぎる

穏やかと
それ以外に言いようがない
そんな風景は
いつかあなたと見たものと似て

遠い日から
時計は止まらず
音はやまない
傍らには風が響くだけで

もう悲しみ色には染まらず
こんな凪のような
揺らぎもなく静かな
心の面持ちだけれど


やまない
遠く遠く
心音のような
ゆったりとしたリズムで

あの頃の音が
いつまでもやまないのです
戻る   Point(5)