やまない音/霜天
あちこちに光を反射する海と
緩やかに登っていく山の斜面とに
張り付くような町を
通り過ぎる
ざあざあと
長い波間を
滑り込むようにして
通り過ぎる
穏やかと
それ以外に言いようがない
そんな風景は
いつかあなたと見たものと似て
遠い日から
時計は止まらず
音はやまない
傍らには風が響くだけで
もう悲しみ色には染まらず
こんな凪のような
揺らぎもなく静かな
心の面持ちだけれど
やまない
遠く遠く
心音のような
ゆったりとしたリズムで
あの頃の音が
いつまでもやまないのです
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