春に降る雨/ku-mi
桜の咲かない四月が終わろうとしている。
風の強い朝、ひんやりとする外気に体がきゅっとこわばる。先月買ったばかりの白いトレンチコートの前を抑え点滅を始めた交差点を足早にわたる。
ふと見上げれば重く低い雲。朝の天気予報では降水確率は80パーセントだったのを思い出す。駅を目前にして取りに帰る時間と面倒を考えれば、気持ちはすでに会社近くのコンビニエンスストアを頼りにしている。そんなふうに、家には透明の傘が増えていくのである。
春と言うにはまだ早い枯色の町並みでは、北海道出身ではない私にとって「ここからがスタート」と気持ちの線引きが難しい。
出会いや別れをこめた春の流行歌に自分を重ねれば
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