書店で働くということ/吉田ぐんじょう
 

と頭を下げて
ふと手のひらを見ると
いつも真っ黒に汚れている
その手で眼をこするので
わたしの眼はだんだん大きくなってゆく
多分近い将来は
一つ目になってしまうことだろう
あまり知られていないことだが
書店の店員は
みんなそれで辞めていくのである
ほぼ一つ目になった先輩社員が
月明かりを背に
お疲れ様
明日もよろしくね
と鷹揚に笑った


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