春の記憶/角田寿星
 
ムのロックを解除し大気を吸いこむ日が
いつか

燃え残った雑誌の一葉の写真
雪混じりの大地 灌木 シラカンバの林
枝々の向こうひろがるどこまでもとおい
あおいあおいあおい
空の記憶が
腐蝕していくことさえ許されず
地を這う突風にいつまでも吹き飛ばされて
時の裂け目から迷いこんだふたつの見つめる
生物とは言い難い発光体とともに
こわれるような舞を
おどっていた

いつか
海の薫りがここにとどく時が
この地にひかりさし芽吹く時が
しずかにプログラムの再起動する日が
いつかほほえんでくれるなら
その両手を副えてくれるなら
えいえんに訪れるだろう けして
美しくも素晴しくも成りえない
春を
祝福するかのように

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