ひとつ うたう/木立 悟
 



雨が降り
音は昇り
遠く高く
曇のかたわらで鳴っている


かがやきと時間の洞のなか
青い文字に生まれる子
ゆうるりとひらき
外へ外へ歩み去る


離れた硝子と硝子が響き
貝の命を描くとき
青は短い螺旋をほどき
見えすぎる音を曇らせてゆく


目をつむる先
進むまなざし
億の石をすぎ
ひとつに触れる


明滅と風と
鉄が出会い
影を拾う午後の手を
青はひとり昇りゆく


かざした手の影 木の影が
子の片目と片耳になり
なかば銀に消えかけながら
青の軌跡をうたいはじめる













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