土曜日の森/はじめ
土曜日になると僕はいつも頭の中に森が思い浮かぶ それは荘厳で深緑に煌びやかで僕をとても安心な気分にさせる
僕はその森の中へ入っていく 吐く息は真っ白から緑になる この森の中では季節がめまぐるしく変化するようだ 濃密な霧が出てきて僕の肌を蒼く湿らす 僕の汗と無数の水滴が混ざって臍の窪みまで流れていく 僕はジャンパーを脱いで奥へと進んでいく
奥は春になっていて 一人の少女がピアノを弾いて森の小さな可愛らしい妖精達や精霊達がそれに合わせてダンスを踊っている 僕の傷ついた心はぱぁっと明るくなって それが表情にも出て 駆け出して僕がピアノを弾いて少女達を踊らせる 愉快で心が弾むような曲で 少女は軽
[次のページ]
戻る 編 削 Point(5)