星を千切る/嘉村奈緒
 

鱗はがし


   ぐったりとした坂の両脇

   片付けられたばっかりの ここは小さな店屋さん

   向かいではやけくそなハンマーが突き出た骨を打っていて

   ときどき喧嘩のような声がする


   運び出された土くれだとかは 当面、海へとほうられる

   じゃりじゃり ここいらの 口当たり


   海からはちらほらと薄い影が打ち上げられて

   昼時にもなるとしゅるりと干上がるのだという噂が流れた




   あすこの体格の良い店主

   ガリガリ

   やけくそのハンマーで例の影まで吸い取って 

 
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