新宿PM9:51/シリ・カゲル
 
のネオンを
全身に被爆し続けているのだった

だが、象はただ立ったまま犯されているだけではなかった
よく見ると象はしきりに鼻を動かしては
クーラーの室外機やら錆びた消火栓やらから
グラフィティの描かれたステッカーを
のり跡が残らないように器用に剥がしては
道行く人たちの目には入らない、路地の外壁の
3階の高さのところに貼り直しているのだった
その姿はまるで……

象の悲痛なほど丹念な仕事の一部始終を目撃してしまうと
僕にやるべきことはひとつしか残されていなかった
僕は通りの真ん中に立ちはだかって、カメラを構える
僕とナウマン象がその瞬間、一対一で対峙する
象が非完全
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