イチコが死んだ日/十
望を散りばめようとして
そして失敗します
イチコが死んだ日
空は晴れ晴れとしていました
イチコが死んだ日
おまえは枕に顔を突っ伏して
泣いていました
イチコが死んだ日
おまえの母も少し泣いていました
おまえは知らないでしょうけど
イチコが死んだ日
三年程使っているトースターのチンという音を
初めて聞いた気がしました
おまえはびっくりするかもしれませんが
僕にもわからないことが沢山あるのです
ただ思うのは
死というのはなんと残酷なものだろうと
ただ思うのは
死というのはなんと冷ややかなものだろうと
だって
一番やさしい人が
一番苦しいのだから
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