騎上/hon
 
何という曇天か!
調停は断固として拒絶された
それから涙ぐましい年月だった
粘り気を帯びた雲の低さたるや
橋塔の先端に触れんばかりであった
黒地の御旗が疾風になびいて
金管が酷薄な分散和音を奏する
もとよりバビロンなど知らない
忠実なる栗毛の馬よ
我々はついぞ現場の者であった
いまや騎上にてものを想う
余は気高く最終の一瞥をくれると
身を震わせる凍てつく空気のなかへ
愚かにして逞しい一歩を進めている
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