牧童/
hon
ふもとの牧場をよぎるものは
いつかふたつの影をみていた
不安は彼のものではなく
疑いは彼のものではない
荒涼とした断頭台の丘陵が
不埒に入り組んだ森と
遠くの煙突の羅列に重なり
全く明朗にすぎる小道だった
もうすぐ雲の悩ましい影が
草原の緑をかき乱して
あなたはやさしく受け入れる
そっと閉じたまぶたの奥で
残酷な諍いが懐かしくこぼれ落ちて
あなたはもう一度死んでいく
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