故郷/hon
晴天 やがて使い込まれた
ガラスケースの街並みは
生まれるのと同じ速度で
あわただしく死んでいった
もう一度彼だけは普段着で
重たい顔をあげて
何ごともないかのように
ミラーを通りこしてゆく
だってほら この辻を曲がれば
あの坂道だ
どうにも予想通りにすぎた
つめたい汗が出てくる
がんらい彼は指名手配者なのだ
人を隠すなら 人のなかだと……
だってほら だれしも生きていれば
見もしらない街角で
見もしらない人物と
見もしらない時節に
見もしらない再会を
余儀なくされるものなのだ
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