人/ゼロ
 
 耳をかたむけている
語りかける言葉が
 やがて胸に落ちて
 花を開く瞬間がある
 少し軽くなった足は
 人ごみの雑踏に消える
 
そこには音がある
生きている音
 
人が生きる姿は
  躊躇する足を進める
  決めた方角には
  いつも人がいる
  人に背中を押されて
  前に出した足の下に
  また人がいる
  どこにいても

  人の周りに人がいる
人の数だけ物語がある
 
人が語りかける言葉に
  耳をかたむけている
  やがて足はまた
  人ごみの雑踏に消える

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