季節外れに壊れた扇風機/
 
わたしがこの家にやってきたのは
もう十七年も前のこと
途方もなくよく晴れ渡った
それはそれはなんの変哲もない
おだやかなある秋の日
一機のエアプレーンとともに
デパートで買われたわたしは
なんの感慨もなくこの家にやってきました
その日も窓の外では
夥しい数の洗濯物が風に揺れていた
と言います

やがて壁に掛けられたわたしは
晴れの日も、晴れの日も
そぼふる雪の日も
この部屋の虚空に向かって
顔色ひとつ変えず
ただ
現在の気温を示し続けていた
と言います
わたしを壁に掛けようした主人が
釘を打ち損じたときに、ぽっくり出来た
壁の黒い穴も
わたしと同じよう
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