海眼/チグトセ
 
が見えない
僕にだけ見えない
皆に見えているあなたのまぶしい姿を
僕だけ見ることができない
それは、切なかった


ビーチパラソルの陰でぼんやりしているとあなたが来た
僕は気付くのも驚くのも遅すぎた
リアクションを行うことを忘れてしまった
あなたは含み笑いし、僕に対して普段隠している切ない肌理や影を隠さないので、僕は目を逸らした
どうしたの? と訊くので、いやちょっと、と曖昧に応えた
元気なあい、
普段よりも幼そうに見える眉をひそめ、拡げ、はい、と言って手に持っていた黄色い物体を差し出した
それは焼きトウモロコシだった
かじりかけの焼きトウモロコシだった
無言でかじ
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