油断/
あおば
てこないだろう
投網を畳んで魚籠に入れて
漁師の姿で舟を出し
真っ黒な道路をゆっくり漕いでゆく
キーコー、ギーコー、擦れる音が
どこからか聞こえて
油ぎれの症状を示す
ベアリングが片摩耗して
そんな音を出すのだろうと
気にしないでアクセルを踏んだ
月明かりの街は見通しが良くて
いくらスピードを上げても
夢の中の滑らかな弾丸のように
するりと通り抜けられるので
少しも怖くない。
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