春の鼻/はらだまさる
 


四八(しはち)、三拾余の
せかいが破裂音と共にきえた
乱擾(らんじょう)のあかつき


辻斬り紛いの刃はこぼれ
鎧の傷口を匂う、
おぼろな自死


新聞ではバグダッドの
スラム街と市場で起こった
テロルの惨劇を知る


現場から放射状に肥大する
概念と存在の涙腺からは
慟哭がながれ落ち


夜露をせおう草や
のびた陽さえも
いのちを喰う、と云うことを知る


呑みこまれた星ぼしの母よ、
こらえずになけば良い
庭の雀も啼いている


物干し竿に吊られた木綿の布と
路上を、墨塗るように
雨筆がなぞる


なぜ他人
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