回帰線/はな 
 

{引用=風の脚が遠ざかってゆく
あさいわだちは
春の周りをくすぶっていて
いろとりどりのかざみどりが
ゆるゆると迂回しては
家を さがす



信号が青に変わり
ひとなみは とうとうと こうさしていく
あなたが帰っていって
いくつめの春か かぞえているとき
わたしを見て笑ったのも
あなたの 
血を受けた人で

立ち止まれば

あなたは目を伏せて
やわらかな
波の中で




だからそれで良かったのだと
マニキュアを塗るとき
味見をして
舌先をやけどしたとき
いつも 
その風は 吹いていて




おれんじで 匂いたちそうな
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