耳の産声/望月 ゆき
 
ぼくがまだ見つけない 明日の
呼吸の波は、かぎりなく無音で
おしよせては、
皮膚のあいだに刻まれた旋律を
からめとりながら
引いていく


奥深い場所で対流する
なまぬるい記憶、あるいは昨日までの


らせん状、だったのは
貝殻 それとも


仰向けで流れていく時間に
耳を澄ますと 明日の
出口が聴こえる


もう、朝が傾いている


もう、泣いたっていいんだろう
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