短編「The First Encounter」/板谷みきょう
 
肉欲の無い恋愛なんて
スパイスの抜けた
ライスカレーの様なものです
                (ミキョウ・イターニャ)

 三人は、黒テーブルを囲んだまま、[会話厳禁]の壁の張紙の前に、なす術もなく黙りこくっているしかなかった。小さな地下一階の薄暗がりの喫茶店には、似つかわしくない程の大きなスピーカーが置かれている。ジャケットを掲示して、うるさい位にジャズを流しているのは、マスターのこだわりでしかなかった。それでいて、マスターはコーヒーを落とす以外は、カウンターの中の席で煙草をくゆらせ、目をつむり小刻みに全身でリズムを刻
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