創書日和。縁 【世界の縁に立つ三つの肖像】/佐々宝砂
ンに
あのひととのディナーを予約してある
なんの記念日だったか忘れてしまった
忘れてしまっても大切な大切な記念日の
大切な大切なディナーを
あのひとはもちろん
記念日のこともディナーの約束のことも
すっかり忘れて果ててしまっているから
きっと来ない
わたしは世界の果てのレストランで
じっと待っている
収縮してゆくのか
それとも拡散してゆくのか
宇宙の卵なのか
宇宙のなれの果てなのか
いずれとも定めがたいカオスを窓の外に眺めて
いつまでも待っている
呆れ顔のウェイターが
何杯目だかわからない珈琲を運んでくる
わたしはシュガーポットの蓋を開けて
四角く切り取られ
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