【短:小説】深夜の電話/なかがわひろか
 
 彼から電話があったのは、すっかり眠りについて、そろそろ楽しい夢でも見れそうだなと思っていたあたりだから、夜の2時くらいだろう。とにかくこんな時間に電話をかけてくるということはそれほどいい連絡でないことだけは、受話器をとる前に僕が考え付いた一つの仮説だ。電話のベルが7回ほど鳴った後(僕は大体電話のベルは7回ほど鳴らすようにしている。それはただの習慣と言っていい。)僕は受話器を取った。
 「僕だよ。××○○だ。」
 それはとある有名な小説家の名前であった。
 はじめに断っておくと僕は小説家でもないし、ごく普通といっていいくらいのサラリーマンだ。サラリーマンでもないとこんな時間にぐっすり睡
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