【短:小説】あまがえるの雨宿り/なかがわひろか
 
 ドアをとんとんと叩く音が聞こえたので、ギシギシ言う古いドアを開くと、あまがえるが立っていた。
 「雨が強くてかなわねぇ。旦那、ちょいとの間雨宿りさせてくれねぇかね。」
 僕の部屋はそれほど大きいわけでもないけど、あまがえる一人(一匹?)くらいならそれなりの空間を与えることができるので、快く彼を迎え入れた。
 「いやぁ、久しぶりに雨でも降らそうと思ってね。ちょいと頑張りすぎたかな。こんなに降るとは思わなかったよ。」あまがえるはこちらがすすめてもいないのにソファにどっかと座り込み、いかにも喉が渇いているという素振りを見せながらそう言った。
 僕は冷蔵庫に入っていたウーロン茶をコップに注いだ。
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