起床、息、刃、二度寝/なかがわひろか
今朝は少し寒くて
息をはぁってやったら
一瞬で凍り付いて
まるで刃みたいになって
そこら中に飛んで行って
隣のおばあちゃんがまだ眠ってるって言うのに
勝手に窓を突き破って
おばあちゃんのほっぺたを突き破って
びっくりしたおばあちゃんは何が起きたか
よく分かっていなかったから
僕は大したことじゃないよって言って
そしたら反対側に飛んでいった刃が
今度は野良猫のお尻に突き刺さって
猫はぎゃあぎゃあ叫びだしたから
朝からそれはとてもうるさいから
とりあえず首をちょん切って
塀の上に置いておいたんだ
さすがにもう大丈夫だと思ってたら
まだ一本残っていたみたいで
そいつは用水路の中に入り込んで
分裂してたくさんの刃になって
それを飲んだ子どもの喉にたっぷり刺さってさ
その叫び声がそこら中から聞こえて
もう勘弁してくれよってうんざりして
結局僕は二度寝したのさ
(「起床、息、刃、二度寝」)
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