萩原朔太郎を喚び出す詩/岡部淳太郎
返しきれない
親からの借金のことが気になって
求めきれずにつまずいているのだ
萩原よ
朔太郎よ
あなたの口語の
流暢な響きを裂きながら
俺はどもる
口語でどもる
(それしか出来ないのだ)
それから
回る
青ざめた猫のように
よたよたと歩きながら
回って明日一日の
憂愁を予見する
また桜の花が咲く
だがそんなことにはかまわない
あなたもかまいはしなかっただろう
萩原よ
朔太郎よ
病んでいることが違法であるような世界で
俺はあなたを思い出している
ぶざまな口語で
わめき散らしながら
性のせんちめんたるの中で
ますます陰惨に老いていくのだ
萩原よ
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