アットホーム症候群/田島オスカー
朝の気だるさに風が吹いた
驚いたことに 涙は 出ない
哀しいはずだった 私はいつの日も 常に
夜のかなしみは 朝には 薄くなっていく
主人公には なれずにいた
母がふ、と呟きそうになって
慌てるふうもなくやめてしまった
何故か そこで初めて涙をこぼしそうになって
大丈夫なのだろうか、と思った
気だるさに泣かされて 泣かされて
知らぬうちにこぼした涙に 溺れるつもりだったのに
自分を支配するのは かなしみでなければいけなかったのに
ただの気だるさに幸せを感じて
心を許してしまえば もう負けてしまいそうだ
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