冬の動物園(動物の公開刑務所)/はじめ
動物達の歓声が湧く テレビでやっていたように山田さんの髪の毛が今日も薄くなったからである
群衆の中から罵声が飛び交う
?罪なんて犯すから罰として髪の毛が薄くなるんだぞ?と
群集から笑いが起こる 大抵は動物園にやって来る生き物達はストレス発散の為にやって来るのである 園長もそのことを分かっているらしいが何も言わない 何か言うと動物園を潰しかねないからだ
山田さんは銀行強盗をやってしまった 山田さんは俯き 拳を握り締めながら檻の前に正座する これが服役のスタイルだ 檻の外から発せられるあらゆる暴言や屈辱に耐えながら(服役者には物を投げたり食べ物を与えることは禁止されているが暴言を吐くことは禁止されていない) じっと日が暮れて閉館するのをじっと待っている
閉館後 独房に戻ってきた山田さんに僕は「お疲れ様」と声をかける 山田さんは虚ろな目で微かに笑い 横になった
僕はとてもいたたまれない気持ちになった たとえ山田さんが取り返しの付かない罪を犯していたとしてもだ 独房に入ってくる夕風に山田さんの髪の毛吹かれ ぽろりと数本まとめて落ちた
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