Mの肖像/んなこたーない
 
はMから話を聞いたことがあるだけで、会うのはそのときがはじめてだった。車椅子に乗った父親は、ひどい滑舌の悪さで、終始何かわめいていた。詳しくは忘れたが、これは何かの病気の後遺症で、家族内にも彼の話を完全に理解できるのはひとりもいないとMは言っていた。
 母親は小柄なとても善良そうなひとだった。この夫婦からどうしてMのような頑健な体躯の子供が生まれたのか、本当に不思議でならない。Mの身長は180cmを優に越えていた。それはMの兄も同様で、教養のなさそうな痴呆的な表情もよく似ていた。彼は首筋から顎にいたるまでタトゥーがのぞいていたが、彫り士をしているという話だった。正装姿が妙によそよそしく、不似合い
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