NO MOON/10010
ころはない。気掛かりなのは、元の円周上の各点からランダムに発生する周転円により覆い尽くされていったその先の姿が、結局はひとつの巨大な円を再び構成するのか、それとももっと奇っ怪な、ひとつの肉塊であるような幾何学的な畸形とでもいうべきものへ、あるいは正三角形のような燦然たる形へと漸近的に収束していくのであるか、このこと自体は決して予言されることはないのだ。おそらく、この不吉な形は、それを見ることが不吉であるのではなく、むしろ見る者さえもウルトラバロックの寺院の彫刻群の一部のように取り込んで、陽の昇り来たる方向から星の墜ちる行方まですべてをその身のうちに喰らい尽くしたその形そのものが不吉のうちに耀き出ており、そしてこの形には「OMEN/前兆」という名前がついていて、それは「OMNES/万象」の裏側、ちょうど月の裏側に位置する言葉なのだ。
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