金沢の情景/はじめ
 
る姿が見える
 僕と君だけの世界
 森の前で木の下で華麗に踊っている
 その光景が僕にとっての永遠だった
 森のウサギやリス達が集まって君を見ている
 僕はリクライニングチェアに座ってその様子をずっと見ている
 ふと記憶が途切れた 僕はたくさんの涙を流していた
 1月の金沢の街は急に騒がしくなった
 時間が金沢を暖めているような気がした
 君を思い出すと涙が零れて
 僕は自分が情けないように感じる
 僕の心の中にいる君
 僕の心の中にいない君
 僕は僕の心の中にいない君を愛している
 涙が眼球と頬を冷やして 凍り付こうとしている
 記憶の暗闇に視界をくるみ込んで僕は心を無にする
 君を無くすわけではない 君だけを心に留めておく
 僕は暗闇を心に飲み込む
 すると君がまた踊り出すんだよ
 夜になった世界で君は生きているんだよ
 金沢の情景が暗くなっていく
 僕はゆっくりと目を閉じる
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