ノート(冬からの手紙)/木立 悟
を咲きひらくあなたの前で
私は何をすればいいのかわからない
かつて源に塊があり
砕けてすべてがはじまったことを
継ぐものなく継ぎつづけ
かけらは降りそそぎつづけている
充ち填りぬまま過ぎることの理由や
道なき迂回のつくり出す輪が
野と街の接する荒地のむこうに
午後を見つめてたたずんでいる
巨きなむらさきの音の歩みが
風と熱を運び来る
風には無数のくぼみがあり
かがやく髪と背だけが見える
かがやきは泡の波になり
土の上の葉や声や
眠るかけらを連れてゆく
こだまをやりとりするように
あなたとわたしは滲んでいる
隙間からのぞきあうように近く
姿かたちのないほどに遠い
また異なる日々がはじまり
たくさんの片目がひらくとき
にぎやかな響きと火に囲まれて
あなたとわたしは隣り合う
遠く遠く 隣り合う
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