サクラサクカラワスレマショウ/藤原有絵
忘れなさい
静かな祈りのように
優しい言葉で
私は途方に暮れてしまう
思い 惑って
開いた唇
言葉を発する事も許さず
忘れなさい
と
祈りは薄く
でも頑に重ねられた
バテレンレースのワンピース
翻して
私は走って部屋へ帰る
そのまま毛布を頭までかぶって
心がからっぽにならないように
ばたばたと涙を零し
喉がかさかさするほど沈黙を飲み込んで
三日間
動けなかった
夕焼けみたいな
宙ぶらりんな朝に目覚めると
まだゆるく涙は流れていて
でも もう
優しい事がからっぽにはならなかった
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