そうして夜は酔いどれて/nm6
 
道具だ。


午後十一時の笑顔は、誰しも終わったあと。隣の椅子にさっきまで座っていた女性がいつのまにか消えていて、別の人が座る気配で気づくような、その呆け具合はうっとりするほどで。暗いよ、と言った。明るさはきっとぼくらのしたたかさで、ざわめきは遠く。連なって重なって、畳み掛ける複数の記憶が総体としてぼくに、徐々に大きくなるのは、近づいてくる期限だけじゃなくて、ある跡。ある跡をここに。そうして夜は酔いどれて、一方のぼくはしらふだ。


フリーダム、フリーダム。ぼくらは日々をカットアップ。
通り過ぎる40の灰色スーツ。押し込まれる無数の行き先ループ。
風景がそのまま焼きついて、すべてはことばのかぎり、ちっぽけで。


ふわりと、湿気。酔いどれているのは夜のほうだ。
ぼくはしらふで、ある跡を。ある跡をここに。
ぼくらはすべて受け入れて、遠くをはっきりと見るためだからさ。
フリーダム。自由は、雨あがりの蛍光灯にぼんやりしている。
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