静かな日々の階段を・・・/新谷みふゆ
彼はただ椅子にじっと座っている
赤い林檎のあまさは あたしがみつけだすもの
彼を抱きしめるだけの静かで美しい生活を
いつでも望んで生きている
朝日は遠くにかけていき
あたしはゆっくり立ち上がり珈琲豆を挽く
雨と太陽が草を育て 花を咲かせるように
あたしも彼が必要
熱くもなく冷たくもない言葉でいいの
林檎なら そのまま手渡して
赤い林檎のあまさは あたしが感じるもの
そして あたしの笑った顔は 彼が感じるもの
そして 今日の空模様はふたりで当てるもの
何もない一日の重さをきみなら量れるでしょう
食パンの焼ける匂いがしてきた
赤い林檎の
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