【小説】老紳士の秘密の部屋/なかがわひろか
ていた。
か細い声で(きっともう死を予感していたのだろう)私を怒鳴った老紳士を。
母親の声に似ていると言った老紳士を、思い出して。
私は、親類の人に、あの部屋だけは私にはどうしようもないから、皆さんでなんとかしてほしい、できれば、一緒にお骨と埋めてあげて欲しいと言い残し、その場を去った。
もらったBMWはそのままにして。
私はとある老紳士を、過ごした三ヶ月を、今も不思議に思う。それはなんと言うかとても不思議な日々だった。
盲目の老紳士と過ごした、不思議な時間だった。
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