【小説】老紳士の秘密の部屋/なかがわひろか
 
「家政婦募集容姿端麗、声に特徴のある女性歓迎」

 貯金はもう少しで底をつく。最早迷う術がないのはよく分かっている。だからと言って、これだけの新聞広告に飛びつくやつが私以外にいるのだろうか。と思っていたら、それなりにいた。私と同世代の女性が(なかには明らかに老けている人もいたが、年齢は書いていなかったので、書いていないほうが悪いと言えるし、もしかしたら年を取っているほうが有利とも言えるかもしれない。何を根拠にしてかは知らないが)集まっていた。容姿端麗、という言葉には目を瞑って、声に特徴がある方、のみを優先してここにやってきた。特に誰に言われたわけでもない。しかし、今の私にはそんなこと言っていら
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