流転する、すべての/望月 ゆき
 
くりかえされる、すべてのいのちと
いとおしきわたしの二人称たちに



わたしがあなたを産んだそのとき
それとまったく同時に
あなたがわたしを産んだのです
この、配線だらけの街の
満天のネオンの下で
あなたはいつまでもはだかのままで
わたしのなかに抱かれていました



ことばからいちばん遠い声というものがあって
やかましくも心地よくもないそれは
ほどなくおとずれる半夏生の日にわたしを
とんでもない孤独の底辺に追いやりその直後に
深爪の手をさしのべてはわたしを見下ろし
お母さん、などという聞いたことのないことばを発し
ひどく無邪気に笑うのでしょう

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