フリーダム渦巻きバレエ団/カンチェルスキス
、おれはすがるようにあの娘に訊ねる。
「いくらかな?」
あの娘の笑顔はすごくいい。冷蔵庫にマグネット磁石でとめておきたくなるぐらいの笑顔だ。便秘の悩みもないんだろう。ノートルダムの鐘の余韻みたいな美しい響きの声をおれに聞かせてくれる。
「700円になります」
これだけは自由ではないようだ。そりゃわかってる。わかってる。期待したおれが馬鹿だった。楽しんだんだ。金はちゃんと取られるに決まってる。700円。おれは払った。あの娘は受け取った。手がきれいだった。どれくらいきれいかと言うと、その手に思わず写経したくなるぐらいのきれいさだった。ふいに、声が聞こえる。
「ありがとうございました」
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