中華屋喫茶室/猫のひたい撫でるたま子
の嫁入りついでに海まで探しにきたけど彼女に似た女の子にしか逢えなくて、寂しくて海で少し泣いた。
もう帰ろうと思う。彼女のことは君にいくら話したところで、分からないだろう。
私が、そんな・・と言いかけたところで電話は切れてしまった。
もう何年も経っているのに、彼はまだ高校生が好きなんだ。私が恋人だったときも私は高校生だった。
もう話すこともないだろうから、彼の名前を携帯電話から削除した。
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彼は高校のそばのたこ焼き屋さんで働いていて、よく蛸を切るときに指まで切ってしまい、いつも指にバンソウコウを貼っていた。人相が悪く、売れない画家で、梅島でよくライブをしていた。確か、バンドの名前は「三つ子シタール」。下手くそなヴォーカルギターだった。一人暮らしなのにいつも実家で洗濯をしていた。発音が悪かった。何年もアディダスの緑色の靴を履いていた。歩くと体が左に曲がる人だった。私があげた最後のプレゼントもバンソウコウだった。
想像の限りノンフィクションです。
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