しわ/わら
そんなん、笑って済ましとけば ええんやよ 」
そんなふうに、
ヤニで黄ばんだ歯をのぞかせながら、
厚化粧のママさんは、笑いとばした
その、しわくちゃの顔は、
酒のせいか、
ネオンのせいか、
しょっぱくなるほど、
気丈にも見えてうつった
ぬけきらぬ煙のただよう、
この小さな空気の中に流れついた者たちは、
騒ぎながらも、
だれもが、
うつむいているようにも思えた
まあ、
酔いが覚めれば、
忘れることなのだろうけれど
いま、
目にうつるものこそが、
これ以上なく、リアルに思えた
しみるってのは、
こういう味なんだな
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