灰色レンズアイの男/カンチェルスキス
四人掛けの座席の窓際に座ったら男が
おれの左斜め向かいに座って
こっちに体を傾けたと思うと
今日は人が多いですねなんて言った。
いつも乗るわけじゃないから
いつものことはわからないよとおれは答えた。
オレンジの小さなバックパックを背負ってて
小学生みたいに前髪を切りそろえてた。
透き通った灰色の目にはまったく動きがなかった。
まるで開きっぱなしのカメラのレンズみたいだった。
おれはだからこの男については何も考えなかった。
電車が動き出したら小学校のグランドが見えて
網のないバスケットリングと校舎の時計が示す時刻
どれが間
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