黄金町/リヅ
 
の話をする
八月のある日
その人は一度だけこの町で韓国人の女を買った
表向きスナックとして営業している店の二階で
彼は女と重なる前に並んで寝転び
何か話をしようとした
頭を撫でてやろうとした時
狭い部屋の壁に自分の左肩があたっていることに気付いて
何もしないまま家へ帰った
壁が冷たかったのだ
右隣の女の体温も扇風機すらない部屋の室温も高いのに
ひどく冷たかったのだ
その翌日
彼は京浜急行線の始発に轢かれた

女たちは生きていくために性を売り
男たちは生を買い求めてやってきた
欲望を持たないと生き残れなかった
生きることに疲れた人々は容赦なくこの町に殺された

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