La muerte del Angel/Utakata
小さな白の付け根にはまだ粘り気のある血が付いていて
近くで見た羽毛の上に無数にへばり付いた不定形の染みは濃い褐色で
それは都市の隙間に滑り込んできた
腐りかけの羽根
その子はやさしい子で
嘘のようにいつだって浮かんでいる滑らかな笑みで
水銀灯を浴びた夜の地下道の中で
薄いシャツなびかせていつも踊った
いつも踊った
肩口に咲いた白さの揺れる
痛みさえないまま裂けた腕の付け根から生えた
細い羽根にそっと触れれば
微かに懐かしさにも似た痛みが走った
まるで嘘みたいに笑っていたんだ
そんな友達の話をふと思い出した
天使になんてなれる筈ないと
笑いながら嘯いたその子の話
紙屑にも似た天使の羽根を
腐りゆく羽根を
手の中でずっと包んでいたその子の話
水銀灯を浴びた夜の地下道の中で
薄いシャツ靡かせていつも踊っていた
いつも踊っていたその子の話。
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