ふるえ はざま/木立 悟
 


草の汁の香
冬の忌に満ち
かさぶたとかさぶた
双つの雨粒
ゆるりと肌に消えてゆく


脚の十字 手の十字
持ち上がる夜と闇の音
落ちる音 穿つ音
かたちを残し
流れ去る音


雨は終わり
わずかにはじまり
夜は夜をたたんでゆく
甘やかな
甘やかなあぜ道


灯はにじむように点き
音は光だけを倒してゆく
樹は土に触れ
白と黒の輪が生まれ
風の長さに離れつづける


落ちた光のひとつが泣き
傷を照らしてかがやくとき
失くしたはずの傾いだうたが
わずかなはじまりに降りそそぐとき
午後は冬の笑みを聴く


においがにおいをおし流し
記憶も記録も追悼もなく
羽は呼ぶことのできない水に立ち
ひとつの時とひとつの目
ひとつの誓いにはばたいてゆく












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