繁殖用/チアーヌ
わたしは彼のことを
好きだと思った
彼とわたしは性交した
いつになく長い性交だった
「逃げよう」
彼は何度も繰り返した
「あいつらを噛み殺し、逃げよう。
ぼくらにはそれができるはずだ」
けれど間もなく、わたしたちは引き離され、
彼は檻に入れられ去っていった
檻に入れられるとき
彼は微かに唸った
でもそれだけだった
わたしは彼の子を宿し
檻の中で出産した
「あいつ、処分されたらしいよ」
仲間が教えてくれた
わたしは決意した
この子たちを守らなければならないと
檻の中に寝そべりながら
わたしは機会を伺ってる
今度檻が開いたら
わたしはあいつらをひとりづつ噛み殺し
子供たちと共に逃げるのだ
繁殖用のメス犬だと
甘く見ているあいつら
わたしの男を
簡単に処分したあいつら
わたしにも牙があるのだ
忘れているようだが
スリッパの音を響かせて
歩き回るあいつらの足を
眺めながら
わたしは夢想する
そして機会を伺っている
いつか
きっと
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