春の首筋/蒸発王
 
抑えて
白い首筋を睨みつけていると
今にも泣きだしそうな顔で
女が私を見つめ
涙が流れた

瞬間

痛みで目が覚めた

血の味がする
眠りながら
唇を噛み切ってしまっていたらしい


まだ夜明け前だが
空は薄い群青色だ
寝汗をかいて
火照った体を冷ますために
窓を開けた

風が吹き込んで


桜が入ってきた

アパートの窓のすぐ前に生えている
昼間は薄紅色に色づいた桜の
其の色は


真っ白な花びらで


ほのかに
涙の匂いが鼻をついた



そう


桜は


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