濡れたトイレットペーパー/チグトセ
 
てあの牛は
もっと草を食べたかったかもしれない
食べていたかったかもしれない
草を美味しいと思っていたかもしれない
美味しくて
本当に美味しくて幸せだったかもしれない
そういうふうに悟っていたかもしれない

牛は
明日はもう草を食べられないんだという事実を
聞かされたとき
すごくきっとどきどきした

何を
どの草を食べよう?
どの草を食べたらちゃんと幸せになれるだろう?
ああ、幸せだ。
って今までのどの幸せよりも最後だから
素敵で

だからそんな、
何を
食べたんだろう

ちゃんと食べたかな
結局迷って決められなくって
食べられなかったなんてこと
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