なんだかわたしはすこしつかれた。/佐々宝砂
 
遠くまできてしまったね。
遠足だものね。ね。
引率の先生が伸びをする。
先生は元気がいい。
わたしも背筋を伸ばしてみる。
ぐきぐきと筋肉やら骨やらがきしむ。

なんだかわたしはすこしつかれた。
ずうっと歩いているのだもの。
どうしてこんなことさせられるのかしら。
わたしはもう十八なのに。
もうすぐにお嫁にだってゆけるのに。

遠くまできてしまったね。そう言うと、
引率の先生が笑った。
そんなことはないよ、ここは、
ホームから三キロくらいしか離れてないよ。
ああ、そうだった、とわたしは思う。それで、
わたしの体はこんなにいうこときかないのだ。

だけどわたしはすぐに忘れる。
なんだかわたしはすこしつかれた。
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